トリクルダウン経済学(Trickle-down economics)

在位70年に及んだエリザベス女王死去の喪が明けた英国を待ち受けていたのは、財源なしで大規模な恒久減税を強行するトラス氏の経済政策「トラスノミクス」に対する市場の厳しい洗礼だった。高騰するエネルギー費対策として1500億ポンド(約23兆2900億円)、500億ポンド(約7兆7600億円)の恒久減税に市場は一斉にポンド売りに走った。 トラスノミクスは1980年代にロナルド・レーガン米大統領やマーガレット・サッチャー英首相が提唱したトリクルダウン(滴り落ちる)経済学による。政府は富裕層や企業に対し減税を行って成長を促す。税率が低ければ銀行は融資を増やし、起業や投資が拡大する。経済のパイが大きくなれば、富裕層や企業が受ける恩恵が労働者にも行き渡るという理論だ。 国際通貨基金(IMF)は「貧困層と中間層の所得シェアを増やすと成長率が高まる。上位20%の所得シェアを増やすと逆に成長率が低下する。金持ちがさらに金持ちになると、その恩恵は全体に行き渡らない」とトリクルダウン経済学を否定している。ジョー・バイデン米大統領も「トリクルダウン経済学にはうんざり。それは全く機能しない」とツイートした。